院長ブログ

眼内レンズの話〜その歴史について〜

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白内障の手術を受けられる患者さまから『眼の中にレンズなんて入れちゃって大丈夫なの?』という質問を受けることがあります。
答えはもちろん、『大丈夫』です。
 
 
でも、眼の中にレンズを入れても大丈夫と分かり、初めて眼内レンズが使われたのは1949年、つい70年前のことです。
 
それまでは、白内障の濁りを取っても眼の中にレンズを入れることができず、手術の後は分厚いレンズのメガネをかけなければ物をよく見ることはできませんでした。
 
初めて眼の中に入れたレンズはPMMAという硬いプラスチック製のレンズでしたが、どうして、眼の中にレンズを入れても大丈夫と分かったかというのは、実は偶然の産物でした。
第二次世界大戦中、飛行機乗りが攻撃を受け、割れた窓の一部が眼の中に入ってしまいました。それまで、眼の中に異物が入ると強い炎症が出てしまうと考えられていましたが、そのパイロットの眼には炎症が起こらなかったのです(多少は起こったでしょうが)。それで、その飛行機の窓の素材のPMMAのプラスチックは眼の中に入っても異物反応が起きないということが分かり、それから眼内レンズが開発されたという経緯があります。
 
 直接は関係ないですが、、、
 
最初にできたPMMA製の眼内レンズは硬くレンズを入れるのに6mm以上の大きな創口が必要になります。当時は創口を大きく開けて、水晶体の濁りをそのまま取り出す方法が主流であったため、眼内レンズの硬さは問題ではありませんでした。
 
 
しかし、超音波による白内障手術が進歩すると白内障を取り出すのに必要な創口のサイズは3mm、2mmとどんどん小さくなります。
せっかく小さな傷口で白内障を取り出せるようになっても、レンズを入れるためだけに創口を広げるのはもったいないという考えが出てきます。
それは、創口が大きくなればなるほど、組織の強さは低下しますし、乱視が強くなってしまうからです。
 
そこで、眼内レンズの素材はより柔らかい、アクリルやシリコンが使われ、レンズを折りたたんで小さな傷口から眼の中に挿入するようになり、さらに、『インジェクター』というレンズを折りたたんで挿入する器具が開発され、さらに小さな傷口(1.8mm)からの挿入が可能となっています。
 
 
それから、レンズの機能面での進化もあります。
元々は眼内レンズは単焦点レンズのみで、術後は完全な『老眼』の状態になり、焦点が合う距離はくっきり見えますが、そこから離れれば離れる程、焦点が合わなくなり、ぼやけて見えるようになります。そのため、焦点が合わない距離の物を見るには眼鏡が必要になる訳です。
また、初期の眼内レンズは遠視や近視の度数を矯正する成分のみで、乱視は治すことができませんでした。
 
まず、1990年代から乱視を矯正する成分も加えた『トーリック眼内レンズ』が開発され、現在では白内障手術時に乱視による見えにくさも改善することが十分可能となっています。
 
 
そして、2007年には焦点を遠方と近方と2ヶ所に作ることができる『多焦点眼内レンズ』が日本でも認可され、2008年には先進医療での使用が認められるようになりました。この多焦点眼内レンズにより、白内障の手術の後に遠方と近方とを眼鏡をかけることなく裸眼で見ることも可能になり、ある意味『老眼』も治すことができる状況になっています。更にこの秋からは遠方と中間と近方と3ヶ所に焦点を作ることができる3焦点の多焦点眼内レンズも国内で承認されるようになり、より快適な術後の見えかたが得られると思われます。
 
このようにどんどん進化してきた眼内レンズですが、最新の3焦点多焦点眼内レンズでも長所と短所はありますし、単焦点レンズが多焦点レンズよりも優れている点もあります。どの眼内レンズが一番よいか?という質問には、その患者さま一人一人のニーズと希望に合うレンズが一番よいレンズと思っています。
 
白内障手術は一つの眼にとって一生に一度の手術です。
せっかく受ける白内障手術でより理想の見え方に近づけるようなお手伝いができればと思います。
 
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