院長ブログ

軸ズレ修正

今日は午前が外来、午後は手術で、白内障16件、黄斑上膜の硝子体手術1件、トーリック眼内レンズ軸修正1件でした。

今日の手術では2週間前に、乱視矯正度数つき(トーリック)の多焦点レンズ(パンオプティクス)を使い右眼の白内障の手術をした方の再手術がありました。術翌日はよかったのですが、術後2回目の診察の時に、見えにくさの訴えがあり、検査データからは乱視が増えており、症状の原因と思われましたが、実際に眼を見ると、レンズのトーリック軸が30°ほどズレていました。このような状態を“軸ズレ”と言いますが、トーリックレンズは1°ズレる毎に約3%の乱視矯正効果が弱くなるとされ、30°ズレるとその効果がほぼなくなってしまうと言われています。なぜ軸ズレが起こるかというと、まずは手術の時に乱視軸に合わせて正確にレンズが入れられているかということと、術後にレンズが回転することがあることが原因として挙げられます。僕のところでは手術の時にCALLISTOという器械を使い、合わせるべきトーリック軸を手術中に眼に投影することでより正確にトーリック軸を合わせていますし、術翌日は乱視がきれいに消えていましたので、手術の時にはうまく軸は合わせられていたと思います。レンズは2本の支えが水晶体嚢の中で張ることで固定されますが、水晶体嚢の大きさには個人差があり、この患者さんでは強度近視で水晶体嚢が大きくレンズが術後に回転してしまったのではと思われました。すぐに直してもよかったのですが、術後すぐだとまた回転してしまう可能性があり、水晶体嚢の中に残った細胞が接着剤のような働きが出てくる術後2週間くらいを目安に今日、再手術をさせていただきました。術後の経過によっては、今回のような再手術が必要になり、その時の費用はもちろん発生しますが、患者さんから『手術のミスではないか?今回の費用を払うのは納得できない』と言われてしまいました。確かに気持ちは分かるのですが、適切な処置を行なったとしても手術の経過は思ったようにならないことはどうしてもあります。その時の治療費は保険診療で受ける以上、再度の手術はその内容に対してまた新たな費用が発生します。その費用の支払いが納得できないのであれば、選択肢としては、現状を受け入れ治療を受けずにそのまま過ごすことです。眼科の手術ではなぜか術後の再手術に対して、費用の支払いに拒否反応を示されることがる気がしますが、例えば、胃癌とか大腸癌とかお腹の手術の後には、腸閉塞という合併症が出る場合があり、鼻から管を入れたり、状況よっては手術が必要になることがありますし、癌の手術の後には再発の可能性もあります。僕は以前、外科医をしていましたが、その時に、『手術が悪いから腸閉塞になった』とか、『再発した』と言う患者さんや、再手術の時に『手術のミスだから費用は払わない』と言う患者さんは僕の知る限り全くいませんでしたし、普通に考えれば、費用を払わないと言うなら手術はできないのも分かるかと思います。眼の手術も同じで、精一杯しっかり適切な手術をしても、どうしても思うような結果にならないことはありますし、再度の手術が必要になることもあります。その時は申し訳ないと思いますが、どうか状況をご理解いただければと思います。

ちなみに、今日の患者さんも、僕の説明不足もあり、きちんと話したらご理解いただき、予定通りの処置を行うことができました。どうもありがとうございました。

今日も手術、お疲れ様でしたm(_ _)m

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