今日は一日外来で、手術の申し込みは、白内障7人、眼瞼下垂1人、眼瞼内反症1人でした。
今日、白内障の手術目的で紹介受診いただいた50代後半の女性の方は、紹介いただいたクリニックでは緑内障の点眼治療を行い、定期的に通われている方でした。50代とお若く、-10Dを超える強度の近視もあり、術後は眼鏡を掛けることなく過ごしたいと多焦点レンズのご希望がありました。
一般的に、緑内障のように白内障以外の眼の病気があると多焦点レンズは使いにくいとされていますが、単に他の病気があるから多焦点レンズが適応外となる訳ではありません。
多焦点レンズ、特に3焦点レンズにような回折型のレンズでは遠方、中間、近方に光を振り分けることになるので、それぞれの距離を分配された少ない量の光で見るような形になります。白内障のない人でも、部屋の電気を一番明るくしていると問題なく見えても、明るさを落とすとちょっと見えにくいなと感じるようなもので、眼の機能が十分な人であれば、多焦点レンズでも問題なく見ることができますが、見る力に影響するような病気を抱えた眼では、多焦点レンズの光が減った見え方では不十分となってしまうことがあります。
なので、もし、白内障以外の病気があっても、視機能に影響がないような状況であれば、回折型の多焦点レンズを使うことも可能と考えています。緑内障であれば、視野の欠損が中心10°にかからなければ、視力自体には影響がほとんど及ばないため、一応は、多焦点レンズの適応としています。ただ、ここで、“一応は”というのは、この緑内障の状態であればということで、もし、今後、緑内障が進行してきてしまった場合は、結果的に適応外だったということになり、多焦点レンズを使う条件としては、今後、緑内障の進行をうまく抑えていければ、多焦点レンズを使ってもよいかと思いますということになります。なので、現時点での病気が多焦点レンズの適応であっても、その病気がどんどん進行している最中であったり、将来的に進行してしまって多焦点レンズで余計に見えにくくなるのが心配という方は、無理せず、単焦点レンズか、なるべく広く見たいのであれば、多焦点レンズでもEDOF型(焦点深度拡張型)のレンズを選択するとよいかと思います。