院長ブログ

PureSee

今日は一日外来で、手術の申し込みは、白内障10人、眼瞼下垂1人、黄斑上膜の硝子体手術1人、眼内レンズ交換1人でした。

秋は学会のシーズンで、多くの眼科医が集まる学会に合わせて新製品の発表がされる時期でもあります。眼内レンズもこれから新しいものが発売されますが、AMO社から新しく販売された“PureSee”(ピュアシー)という多焦点レンズを当院でも使い始めました。

今、日本で使われている多焦点レンズは大きく分けて3焦点レンズと焦点深度拡張型(EDOF型)がありますが、PureSeeはEDOF型になります。選定療養に使えるEDOFタイプにはアルコン社のVivityというレンズがありましたが、PureSeeで2つ目になります。

3焦点レンズは遠方、中間、近方に光を分配する構造になっていますので、遠方から近方の手元35〜40cmくらいまでは見える設計になっていて、見える範囲としては広いですが、光学的に光のロスが10%くらい出てしまうことと、その90%くらいの光を遠方、中間、近方に振り分けますので、どうしてもくっきり見える度合いが多少下がってしまいます(コントラストの低下)。また、暗い中で光を見るとその周りに輪が見えたり(ハロー)、光の周りがボヤけたりする(グレア)異常光視症が必ず現れます。一方、EDOF型のレンズは光を伸ばす構造で、一般的には遠方から中間距離まではスムーズに見えるようになっています。手元の近くは弱く老眼鏡が必要になってしまうことが多いですが、光のロスは少なく(全くない訳ではないと思っています)コントラストは良好で異常光視症も少ないとされています(これも全くない訳ではないと思います)。なので、なるべく広い範囲が見たいけれど、コントラスト下がることや夜の光がおかしく見えると嫌だと思うような人で、手元は眼鏡を使ってもいいかなと思えるような人にはよいレンズかと思います。また、緑内障や黄斑上膜など他の病気がある人に3焦点の多焦点レンズを使うと、かえって見えにくくなってしまうことがあるのですが、EDOFタイプはコントラストがよいので他の病気があっても使いやすい多焦点レンズです(他の病気があっても必ず視力がしっかり出るということではありません)。ちなみに、度数の設定もできるので、遠くはそれほど見えなくてもよくて、逆に手元はなるべくしっかり見たいというような場合には、レンズの度数を軽い近視に設定すると、そのような見え方にすることもできます。選定療養のEDOFレンズのPureSeeとVivityの使い分けは、基本的なには概ね同じような見え方かと思いますが、PureSeeの方が焦点のピークが遠視側にも拡がるので、近視気味の度数設定にしても遠方の視力が落ちにくい可能性があり、少し近視めに度数を設定する時や左右で多少の度数差をつけるマイクロモノビジョンにする時、強度近視や強度遠視、レーシック後などで度数がズレやすい時には使いやすいレンズかと思います。それから、PureSeeはテクニスというレンズのプラットフォームが使われていて、透明性の高いとてもきれいなレンズです。見え方には直接影響はないとされていますが、レンズがきれいなことはいいことだと思うので、個人的には好きなレンズです。

レンズは必ずしも新しければ新しいほどよいとは限りませんし、レンズの種類が増えるとどのレンズを使えばよいか悩ましくはなりますが、選択肢が増えることはよいことかと思いますし、その選択肢の中から自分に合うレンズを見極めて選ぶことが重要だと思います。PureSeeの登場も患者さんにとって選択の幅が拡がる恩恵となってくれるといいなと思います。

TOPへ