院長ブログ

強膜内固定の時の制限

今日は午前が外来で午後は手術でした。
手術の申し込みは、白内障5人、眼瞼下垂1人、硝子体手術(強膜内固定)1人で、今日の手術は、白内障9件、翼状片1件、霰粒腫1件(3歳男の子)、黄斑上膜の硝子体手術1件でした。

今日の外来では、昨年の春に当院で多焦点レンズ(パンオプティクス)を使った白内障の手術を受けていただいた60代前半の男性の方が『1か月くらい前からレンズが動いているような感じ。上を向いた時にレンズの影が見える気がする。』ということでいらっしゃいました。白内障の手術の後に“レンズが動いている”と心配されていらっしゃる方もいますが、実際にレンズがズレてしまっている人はそうはいません。でも、今日の患者さんは実際にレンズの偏位が起こっていました。こうなると、今入っているレンズを取り出し、新たなレンズを眼の壁に固定する“強膜内固定”という手術を予定させていただきました。

普通の白内障の手術であれば、患者さんの希望や眼の状態に応じて、眼内レンズの選択の余地が色々ありますが、強膜内固定では3ピースタイプのレンズを使わないとならず、3ピースタイプのレンズは単焦点しかなく、乱視矯正のトーリックタイプもなく、レンズ選択の制限が出てしまいます。強膜内固定で使えるレンズでも多焦点やトーリックが使えればいいなとは思いますが、強膜内固定では、レンズを2点で固定するため、どうしてもレンズの傾きや中心からのズレが多少出てしまい、傾斜や偏心が出やすく、多焦点レンズの効果が十分に発揮できないどころか、見え方がブレてしまったり、夜の光が余計におかしく見えてしまう恐れがあるため、強膜内固定での多焦点レンズの使用は現実的には難しいかと思います。乱視用のトーリックレンズも角膜の乱視の方向に合わせてレンズを入れる必要があるのですが、強膜内固定では、レンズを固定しやすい位置がある程度決まっていますし、仮に自由な位置に固定できたとしても、乱視の軸とトーリックの軸をぴったり合わせることは簡単ではありません。単純に強膜内固定用の多焦点やトーリックの眼内レンズ自体は作ることができても、実際に眼に入れた時に、それで十分な効果を得ることが難しいため、そのようなレンズがないのがないのが現状かと思います。遠方も近方も見えるようにすることや、角膜乱視の影響は残ってしまうという制限はありますが、眼内レンズがズレてしまった場合は、手術をせざるを得ませんから、使える単焦点レンズでなるべく不便の出にくいピント設定で手術をするしかないかと思います。今日の患者さんも片眼は多焦点レンズが入っていますので、強膜内固定する方の眼は遠方にピントを合わせるレンズ選択をしました。角膜乱視があるので本当はトーリックレンズが使いたいところですが、なるべく乱視が増えないような手術したいと思います。

今日も手術、お疲れ様でしたm(_ _)m

TOPへ