今日は一日外来で、手術の申し込みは、白内障3人、眼瞼下垂1人、霰粒腫2人(8歳女の子、32歳男性)でした。
今日の外来では、先週、加齢黄斑変性(AMD)に対して抗血管内皮増殖因子抗体(VEGF)薬の硝子体注射をした70歳代半ばの患者さんの経過観察があり、『注射してから見えにくくなった』ということで、眼の中を見てみると、黄斑部の出血が増えてしまっていました。 AMDは脈絡膜に新生血管ができ網膜の出血や浮腫みを起こす病気ですが、抗VEGF薬の硝子体注射をすると、新生血管や網膜の浮腫みが消褪する方向に働き、通常、注射して1週間くらいして、浮腫が減ると見え方が少しよくなってくることが多いですが、時々、硝子体注射をした後に網膜の出血が増える方がいらっしゃるように感じます。注射てもしなくとも出血はしていたのかもしれませんが、もし注射が原因とすれば、新生血管が萎む時に脆くなった血管から出血を起こしてしまうこともあるのかと思います。なかなか難しいところで、それを心配して注射をする機会を逃してしまうことも適切ではないように思います。
とはいえ、よくなることを期待して注射をした後に見え方が悪くなったと感じるなら、治療が適切でなかったのでは?注射の時に何か悪いことをしたのか?違う薬を入れたんじゃないか?など色んな不安や疑問を持つお気持ちも当然あるかと思います。また、この患者さんは両眼のAMDで左右合わせて計15回の硝子体注射の治療を真面目に受けてくださっていますので、尚更、『なんでちゃんと治療を受けてきたのに悪くなるんだ?』と思うのも当たり前のお気持ちかと思います。しかし、加齢黄斑変性という病気は網膜に浮腫みや出血を来たし、最初のうちは抗VEGF薬の硝子体注射をすると浮腫が引けば視力は改善しますが、単に浮腫みの問題ではなく、滲出液や出血で網膜の細胞がダメージを受けてしまい、注射をして水(浮腫み)が引いても視力の改善が前ほどではなくなってくるという状況になっていくことがあります。
加齢黄斑変性は以前はなかなか有効な治療がなく失明もしくはそれに近い状態になってしまうことも多かったところ、2008年に抗VEGF薬の登場(保険適応)により治療が十分可能な病気となりました。しかし、“治療が可能”といっても、完全に治せる訳ではなく、あくまでも治療の目的は視力の維持です。それでも、治療すれば必ず病状の進行を抑えられる訳ではなく、少しずつ進んでしまったり、大出血を起こして急に悪化してしまうこともあり、欧米では中途失明の原因の第1位ですし、日本でも4番目の病気です。もちろん、だからといって、見えにくくなっても、失明しても仕方ないということではなく、病気の経過の特徴をよくご理解いただくことは必要で、でないと、言われた通り真面目に治療を受けているのにという気持ちになってしまうと思いますので、なかなか難しい病気ではありますが、きちんと病気の特徴をご理解いただき病気と向き合って治療を頑張っていただきたいと思います。
ちなみに、今日の患者さんはセカンオピニオンを希望され、都内の大学病院へ紹介することとなりました。できる限りの治療はしたいと思っていますし、なるべく分かっていただけるように説明はしたいと思っていますが、納得できない時はセカンドオピニオンを求めることも当然のことと思いますので、もしご希望の際は遠慮なく申しつけていただければと思います。
今日は田園都市線が止まってしまい、出勤できないスタッフもいて患者さんにはご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。来院できない患者さんもいたと思いますが、公共交通機関がストップしてしまった際には、また予定を改めればよいことなので、どうか無理しないでいただければと思います。
今日も皆さん、お疲れ様でしたm(_ _)m










