院長ブログ

逆瞳孔ブロック

今日は午前が外来で午後は手術でした。
手術の申し込みは、白内障3人で、今日の手術は、白内障13件(iStent併用2件)、眼瞼下垂手術1人でした。

今日の外来では約5年前に両眼とも眼内レンズのズレで、そのズレたレンズを取り出し新たなレンズを眼の壁にレンズを固定する強膜内固定の手術を受けていただいた50歳代半ばの男性が、今朝から『左眼が痛くて、スクリーンがかかった見え方になってしまった』と急遽いらっしゃいました。この方は、時々、レンズの後ろに虹彩が引っかかってしまう“虹彩捕獲”という状態を起こしていたのですが、今回は虹彩が完全にレンズの後ろに回ってしまい瞳孔がレンズで塞がってしまう“逆瞳孔ブロック”という状態を起こしてしまっていました。“逆”というのは、通常の瞳孔ブロックというのは、閉塞隅角緑内障やぶどう膜炎などで虹彩と瞳孔がくっついてしまい眼の中の水の循環ができなくなってしまう状態ですが、この患者さんでは虹彩がレンズの後ろ側に回って起こる瞳孔ブロックなので“逆”がつきます。虹彩より後ろ(硝子体側)にある“毛様体”から眼の中の水(房水)が作られ、瞳孔を通って眼の前のスペース(前房)に回り、角膜と虹彩の付け根の“隅角”から房水は眼の外に流れていくのですが、瞳孔ブロックでも逆瞳孔ブロックでも、瞳孔が閉じてしまうと、房水は作られるのは続いても、瞳孔を通りにくくなり、硝子体の中に水がどんどん溜まり圧が上がることで、隅角が閉じて、余計に房水の排出が悪くなり眼圧がどんどん上がってしまうという悪循環を生じます。

この患者さんも眼圧が60mmHgを超え、眼がパンパンになってしまったため、眼が痛くなり、角膜が浮腫んで見え方も悪い状態となっていました。強膜内固定の手術の時に虹彩切除をしていれば、虹彩の前後で房水の流れができるため、このようなことにはならないのですが、この患者さんでは虹彩切除をしたいなかったので、レーザーで虹彩に穴を開けるレーザー虹彩切開術(LI)を行わないといけないかと思ったのですが、今回は瞳孔を開く点眼薬(散瞳薬)を使うことで、虹彩が眼内レンズの前方に戻り逆瞳孔ブロックが解除されたので、今日のところはレーザーの処置はせずに後日改めて行うこととさせていただきました。強膜内固定の時に虹彩切除をするかどうかは議論のあるところかとは思いますが、このようなケースを経験すると、しておいた方がよいかと思いました。

今日も手術、お疲れ様でしたm(_ _)m

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