院長ブログ

ICLの 術後炎症

今日は午前が外来で午後は手術でした。
手術の申し込みは、白内障2人、眼瞼下垂2人、硝子体出血の硝子体手術1人でした。
今日の手術は、白内障16件と硝子体出血の硝子体手術1件でした。

先週の金曜日にICLの手術を受けていただいた30代の男性の方の定期受診がありましたが、『日曜日くらいから右眼が白く濁って見えにくかった。今日は少しいいけど。』という症状があり、術翌日の視力1.2から今日は0.3まで低下し、眼の中を見ると、レンズの表面に白い膜が張っており、眼内の強い炎症が起こっている状況でした。術後の炎症は“眼内炎”といわれ、細菌感染による“細菌性(感染性)眼内炎”と感染以外の原因による“無菌性眼内炎”があります。一般的に眼内炎というと、細菌性の眼内炎のことを指すことが多いかと思いますが、細菌性眼内炎は手術の際に目の中に入った細菌が術後、徐々に増えてくるので、術直後から数日はまだ細菌が多くないので、症状としては問題なく(状態としては問題がありますが、、、)、術後3〜4日くらいで視力低下、眼の痛み、充血、眼脂などの症状が出るのが典型とされています。一方、無菌性眼内炎は、手術の際に使う薬剤や器具に付着する不純物が眼の中に入り、それに対する拒絶反応のような病態なので、比較的、術後すぐに炎症が強く出るとされています。細菌性眼内炎は進行すると、炎症が硝子体の方まで波及し、網膜の血管が細菌の毒素によって障害を受け、適切な処置を行わないと重篤な視力障害を残してしまうこともあります。無菌性の場合、あくまで主体は炎症反応なので、炎症を抑えるステロイドがよく効き、硝子体まで炎症が拡がることは基本的にないとされています。

今回の患者さまの場合、術後2日目から症状が出ていること、ステロイドの点眼で改善傾向なこと、眼脂・充血・眼痛といった細菌性眼内炎にみられるとされる症状が乏しいことから、おそらくは無菌性の眼内炎と思われました。なので、保存的治療で見ることも可能かもしれないと思われましたが、細菌性眼内炎の可能性もゼロではありませんし、無菌性眼内炎を起こす物質がまだ眼の中に留まっていることは十分考えられ、早く炎症を抑えるためにも、眼の中を洗う処置(前房洗浄)を緊急でさせていただきました。患者さまには負担になってしまい、申し訳ありませんでしたが、処置自体は新たにキズを作る訳ではなく、前回のキズをもう一度開け、眼の中の前のスペース(前房)を3分ほど洗わせていただきました。ICLの場合、レンズの裏面は中央のホール越しに洗わなければならず、白内障の手術に比べると、薬剤や異物(レンズを入れるインジェクターのコーティングなど)が眼の中に残りやすいのがあるのかと思います。

無菌性眼内炎であれば、重篤にはならないかもしれませんが、ICLの手術は近視を治すという目的があったとしても、基本的には“健康な眼”にメスを入れる手術で、手術による合併症や後遺症は少しでも起こさない、残さないようにしなければと思っています。もちろん、手術に絶対はないですし、病気の手術なら合併症や後遺症があってもよいというものではありませんが、病気があって放っておけばそれで悪くなってしまう状況とはちょっと意味合いが異なるので、僕らもより慎重に万全に対応をしなければならないですし、患者さまの方も手術を受けるかどうかよく考えて受けていただければと思います。

ということで、もしかすると、眼内を洗う処置はややオーバーだったかもしれませんが、洗わなくてよいかと判断して悪くなってしまうよりは、ずっとよいと思いますし、あとで『あの時、洗っておけばよかった』と後悔しないためにも洗わせていただきました。これでなんとか炎症が改善してくれるといいなというか、なんとかしなければと思います。

今日も手術、お疲れ様でしたm(_ _)m

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