院長ブログ

血管新生緑内障

今日は一日外来で、手術の申し込みは、白内障9人、眼瞼下垂2人、霰粒腫2人(5歳男の子、62歳女性)、硝子体出血の硝子体手術1人でした。

硝子体出血の手術の申し込みをいただいたのは、82歳の男性の方で、茶目の部分(虹彩)に異常な血管(新生血管)ができ、眼の中は出血(硝子体出血)で見えない状態でした。数週間前から左眼の痛みと充血を生じ、他院で炎症止めの点眼と、眼圧が高いからと緑内障の点眼を処方されましたが、なかなかよくならないといらっしゃいました。

血液の役割は必要な組織に栄養と酸素を供給することですが、眼の中の血管の血流が悪くなると、網膜は虚血により酸素不足の状態になります。この虚血状態を改善するために、体の反応としては、新しい血管を作って、血流を増やそうとします。しかし、この時にできる血管は脆く弱いために容易に出血を起こしてしまいます。また、新しく血管を作るために出されるホルモン(血管内皮増殖因子VEGF)は本来、血管がなくてよい部分にも新生血管を作ってしまい、眼の中の水(房水)が流れ出る隅角に新生血管ができると、房水が流れにくくなってしまい、眼圧が上がり、なかなか点眼でコントロールができない難治性の緑内障(血管新生緑内障)を起こしてしまいます。

この虚血状態を改善させるには、視力に関係する中心部を除いた大部分の網膜を焼いて相対的に血流不足をなくすレーザー治療を行う必要があります。レーザー治療自体は外来で行うことができますが、この患者さんの場合、硝子体出血があると、網膜までレーザーが届かないため、手術で出血を取り除き、同時にレーザー治療を行う方針とさせていただきました。レーザー治療は網膜全体を焼くには2000発くらい必要で、痛みを伴うこともありますが、手術では麻酔をしているので苦痛なくレーザーができるのはメリットでもあります。

この患者さんの場合、右眼には異常所見がなく、左眼に急激に虚血変化が出ているので、おそらく眼動脈の閉塞が原因と思われ、網膜自体も障害を受けてしまっていて、硝子体出血を取っても極端な視力改善は難しいかと思われましたが、少しでも視力が改善できればということと、新生血管ができる反応を抑え眼圧を下げる目的も含めて手術の方向としました。この硝子体手術とPRPで眼圧が下がらず、悪い影響が残るなら、改めて緑内障の手術をしなければなりませんが、今のところ眼圧は20台後半から30くらいでそこまで高くはないので、この手術で眼圧が落ち着いてくれるといいなと思います。

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