今日は一日外来で、手術の申し込みは、白内障6人、眼瞼下垂1人、黄斑上膜の硝子体手術1人、霰粒腫3人(5歳女の子、29歳男性、34歳男性)でした。
今日も白内障術後の見え方の相談で何人かいらっしゃいましたが、その中の80代の女性の方は、2月に右眼、左眼の順番に白内障の手術を受け多焦点レンズを入れたところ、術後から物がダブって見えるという複視症状が出てしまい、困って受診されました。ご本人は『多焦点レンズが合わないせいなら単焦点レンズに換えて欲しい』というご希望でしたが、この方の複視は、片眼を隠してもう片眼で見ると、とてもすっきり見えるということで、両眼複視でした。片眼で見ればダブりは出ず、両眼で見るとダブりが出るということは、それぞれの眼は問題なく左右の眼の位置や動き方がダブって見える原因となります。つまり、多焦点レンズが合わず、単焦点に換えればダブりが消えるというものではなく、レンズの入れ換えをすればよいということではありません。この方の場合、上下斜視があり、それが複視の原因と思われましたが、これを改善するには、まずは光を曲げるプリズム眼鏡を使う必要があります。眼鏡が不便であれば、斜視の手術を行うことで複視を改善が可能な場合もあります。
また、この方の場合、おそらく手術の前から斜視はあったと思われますが、術前は全く複視を感じることがなかったそうです。斜視があっても白内障があると、症状を感じにくく、白内障がなくなった術後に複視の症状が出てしまう方も時々いらっしゃるように感じています。斜視の症状を改善する一番手軽な方法はプリズム眼鏡の装用ですが、多焦点レンズは、元々、眼鏡をなるべくしなくて済むようにというのが目的になりますので、斜視がある方は多焦点レンズの使用は控えるか、慎重に検討が必要だと思います。
この方も眼内レンズはきれいに入っていますし、屈折もほぼぴったりで所見上、経過は良好で、手術してくださった先生も患者さんの希望をなるべく叶えたいというお気持ちで手術してくださったのだと思いますが、斜視のある患者さんの手術は注意が必要だと改めて思いました。