院長ブログ

S字状虹彩

今日は午前のみの外来で、手術の申し込みは、白内障2人とアドオンレンズ1人でした。

今日の外来では、去年の3月にICLの手術を受けていただいた24歳の男性の方の経過観察がありました。この患者さんは、術後9か月で、レンズの入れ換えを行いました。その理由は、レンズと水晶体の間の距離(Vault)が狭く、ほぼくっついているような状況で、術後に遠方の裸眼視力は1.2出たものの、近くが見えにくいという状態になってしまったからです。そのため、レンズのサイズを大きいものに変え、Vaultを作り、水晶体が厚くなれる隙間ができるように、レンズの入れ換えをしました。しかし、思ったようにVaultはできず、入れ換え前よりは若干、近見障害が改善したものの、やはり近くの見えにくさは続くような状況です。

しかも、入れ換えとVaultの少なさから若干水晶体の濁り、白内障が出ており、この経過も一緒に見ています。

あまりこのようなケースはないのですが、この患者さんの場合、通常、水晶体に対して水平なカーブの虹彩がS字状にくねった形状をしている特殊な虹彩で、最近の学会で知ったのですが、虹彩の形状異常があるとされ、レンズのサイズの計算が難しく、サイズを変えても極端な効果が得にくいということでした。

結果的になかなか難しい眼だったとは思うのですが、事前にこのようなことは想定できていなかったのは申し訳ないことでした。

今は、少しでも症状が改善できればと調節力を改善する点眼と白内障の進行予防の点眼を使い、近くの見えにくさに対しては必要時に老眼鏡を使って過ごしてもらっている状況ですが、20代前半で老眼状態になってしまい、不便なところもきっとあるでしょうが、状況を理解してくださり、前向きに通院してくださり、正直、ちょっと辛い気持ちはあるでしょうが、今日も診察の終わりに、『暑いので先生も気をつけて過ごしてください』と人のことを気遣える彼は、本当に立派な青年だなと思います。僕なんかよりずっとしっかりしていると思います。医師として多くの患者さんの診療をしていますが、年齢を問わず、尊敬できると思える人との出会いは医師という職業をしていてよかったと思える瞬間です。その時その時にできることをしっかりやっていくことの大切さを教えてもらいましたが、僕自身もやるべきこと、できることをしっかりしていきたいと思います。

今週も皆さま、お疲れ様でしたm(_ _)m

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