院長ブログ

加齢黄斑変性(AMD)

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『黄斑変性』という言葉を聞いたことはありますか?
厳密に言うと『黄斑変性』というのは病名ではなく、眼の状態を表す表現で、物を見るのに重要な網膜の中心部である黄斑部に異常を来たす状態です。
網膜静脈閉塞症や糖尿病網膜症などの病気も進行すると、黄斑部に出血やシミ(白斑)、むくみ(浮腫)ができ、黄斑変性を起こすこともありますが、黄斑変性というと『加齢黄斑変性』(AMD;Age-related Macular Degeneration)という病気が一番、頭に浮かびやすいかもしれません。加齢黄斑変性の方にiPS細胞の移植手術が行われたニュースなどでご存知の方もいらっしゃるかと思います。
 
加齢黄斑変性は年齢により、網膜の下の層の『脈絡膜』という部分の血管(脈絡膜血管)が『脈絡膜新生血管』という異常な増殖を起こし、この脈絡膜新生血管が原因で、黄斑部の網膜に出血や浮腫み、網膜細胞の変性を起こしてきます。
典型的なタイプの他に、脈絡膜新生血管のでき方でポリープ状に隆起するポリープ状脈絡膜血管症(PCV)や網膜血管と網目状の交通を生じる網膜血管腫状増殖(RAP)という型もあります。
 
加齢黄斑変性は症状として見えにくくなりますが、黄斑部という網膜の中心部に出血や浮腫み、シミができるため、特に中心部が暗く見えにくい『中心暗点』、物が歪んで見える『歪視・変視症』というような見えにくさを生じることが多いです。
 
検査としては、通常の眼底検査による所見に加え、OCT(光干渉断層計)という検査がとても有用です。このOCTという検査はCT検査のように、網膜を断面で見る、つまり、網膜の内部を画像で評価できます。(ちなみに、光の跳ね返りを画像にする検査で放射線は使いません。)
 
 
それから、加齢黄斑変性と紛らわしい疾患との鑑別や治療方針の決定のために、造影検査を行います。CT検査やMRI検査の造影のように(量は少量ですが)、造影剤を腕の血管から注射して眼底の写真を撮り、新生血管の有無とその位置などを判断します。
 
 
黄斑部から少し離れた位置に新生血管がある場合は、通常のレーザー治療を行える場合もありますが、黄斑部にある新生血管に対しては、大事な黄斑部の網膜の細胞も傷つけてしまうため、通常のレーザー治療を行うことはできません。
以前は加齢黄斑変性の治療が難しかった理由はここにあります。
 
 
現在では加齢黄斑変性に対しては、抗VEGF(血管内皮増殖因子抑制因子)薬という薬(ルセンティスやアイリーアという名前の薬です)を眼に注射する抗VEGF療法が一番多く行われています。
加齢黄斑変性は脈絡膜の新生血管ができることが原因ですが、抗VEGF薬はその新生血管を抑える働きのある薬です。
この薬を黒目の脇の3mmくらいの位置から0.05cc注入します。
『眼に注射』というとびっくりされる方が多いですが、痛みもあまりなく数分(1〜2分)で終わる治療です。
抗VEGF薬は新生血管を抑える他に、血管からの水の漏れ(血管透過性)を減らす作用や眼の中にできる膜(増殖膜)を抑える作用があり、糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症など網膜に異常を来たす他の病気でも使われます。
 
また、この抗VEGF薬が効きにくい加齢黄斑変性のタイプもあり、その場合には、PDT(光線力学的療法)というレーザー治療を行うこともあります。通常のレーザーは黄斑部には行えませんが、レーザーの光に反応する薬(ビスダイン)を注射し、その薬が新生血管にたまった頃を見計らい、網膜細胞は傷つけずに新生血管だけをレーザーで焼灼する治療です。薬がしばらく体に留まるので、2日ほどは日光の光を避けなければならず、通常、入院が必要になります。(当院では行なっておりません)
 
抗VEGF薬の登場により加齢黄斑変性の治療は劇的に改善しました。
といっても大幅に視力が改善する訳ではありません。網膜は神経の細胞からできているので、一度、悪くなると回復が見込めないからです。
ただ、加齢黄斑変性は基本的には進行性の病気で徐々に悪化し、最終的には失明してしまう恐れのある病気です。この抗VEGF薬を使うことで、病気の進行にブレーキをかけ、よりよい視力を残存させることができるようになったのがとても大きなことです。治療をしても『視力の改善は難しいかもしれない』と言うと、『じゃあ、治療しなくてもいいかな』とおっしゃる方もいますが、視力を維持することも、とても意味のあることだと思います。
 
なかなかいったん悪くなると、厄介な加齢黄斑変性ですが、日本人の失明原因の4番目です(欧米では1番です)。うまく病気に付き合いながら治療を行う必要はありますが、せっかく失明を防ぐよい治療も出てきましたので、治療を頑張っていただければと思います。
 
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