院長ブログ

白内障手術中の痛み

今日は一日外来でした。

手術の申し込みは、白内障5人、眼瞼下垂2人、霰粒腫3人(1歳男の子、1歳女の子、20歳女性)でした。

僕は白内障の手術を基本的に点眼麻酔と前房内麻酔を使って行なっています。

点眼麻酔だけで手術をされている先生も多いのではないかと思いますが、点眼麻酔は眼の表面を麻酔し、表面の痛みを感じにくくさせることができます。もちろん、この麻酔だけでも手術自体は十分可能ですし、僕も白内障の手術をするようになってしばらくは、点眼麻酔だけで手術を行なっていました。しかし、やっぱり、『手術の時に痛かった』とおっしゃる患者さまも少なくないとも感じていました。当然と言えば当然なのですが、眼の中にも痛みを感じる仕組みはあり、毛様痛という痛みが生じますが、これは点眼麻酔だけでは抑えることはできないのです。この毛様痛は虹彩が引っ張られると感じやすいのですが、水晶体の濁りを取り除く操作は、超音波の器械で眼の中に水を流しながら行うので、それを眼に入れた時などに眼の中の圧が急に上がってしまう時に痛みを感じることがあります。近視が強い人や水晶体の支え(チン小帯)が弱い人では眼の中の圧の変動が大きく、痛みが生じやすい傾向にあります。また、圧の格差の影響以外には、瞳孔の開きの悪い小瞳孔の患者さまでは、色々な操作で物理的に虹彩の接触が生じるために痛みが出やすいこともあります。

このような毛様痛を抑えるには、球後麻酔やテノン下麻酔といって、眼の奥の方に麻酔薬を注射する方法もありますが、眼の後ろ側に薬を入れることで若干手術がやりにくくなるので、僕は眼の中(前房の中)にごく少量の麻酔薬を入れる前房内麻酔を併用して手術するようにしています。これで『100%全く痛みがないですよ』とまで言えませんが(昨日の手術でも手術中に『痛い』と言われてしまいました、、、)、点眼麻酔だけよりはだいぶ痛みが生じにくいと実感しています。もちろん、点眼麻酔と前房内麻酔に加えて、漠然とした不安がある方には、笑気麻酔を使うことで、いくらかは楽な気持ちで手術を受けることができますし、『怖いから寝ている間に手術して欲しい』という希望があれば、更に点滴で鎮静剤を注射してほとんど寝た状態で手術を行うことも可能です。

痛みの出方や感じ方は、その人その人の眼の作りや性格にも左右され、白内障の手術でも『全く痛くなかった』という人もいれば、『すごく痛かった』と感じる方もたまにですが、いらっしゃいます。通常、両眼の手術を行うことになるので、片方の眼の手術で痛みや不安が強かった場合は、次の手術できちんと対策を取ることも必要ですし、もし、手術中に痛みが強くてお辛い場合は、追加で麻酔をする方法もありますので、我慢せずに医師や看護師に伝えることが大切だと思います。

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