院長ブログ

強膜内固定で多焦点は

今日は午前が外来で午後は手術でした。
手術の申し込みは、白内障4人、硝子体手術(強膜内固定)1人、霰粒腫1人(41歳女性)でした。
今日の手術は、有水晶体眼内レンズ(ICL)1人、白内障10件、翼状片切除1件、黄斑上膜の硝子体手術1件、眼内レンズ交換1件でした。

今日、眼内レンズ偏位で強膜内固定の手術の申し込みになった歳の男性は、レンティス・コンフォートが使われていましたが、レンティスのような単純な単焦点でないレンズが傾きズレると、その程度の割に視力下がり、自覚的にも嫌な見え方になってしまいます。今入っているレンズを取り出し、新たな眼内レンズを眼の壁に固定する強膜内固定が必要な旨をお伝えしたところ、『多焦点レンズを入れることはできますか?』という質問を受けました。その答えはなかなか難しく、『多焦点レンズは使えず、単焦点レンズを使うことになります』と答えましたが、正確には『多焦点レンズの強膜内固定もできなくはないが、基本的には単焦点レンズにすべきです』ということになります。強膜内固定には、支えの部分がレンズの本体と別に細い素材でできている“3ピース型の眼内レンズ”を使う必要があります。現在、主に使われている多焦点レンズは、1ピース型がほとんどですが、AMO社のZMAという多焦点レンズは1ピース型で強膜内固定に使うことができ、理論上は多焦点レンズを使った強膜内固定もできることになります。ただ、これで良好な遠近の見え方ができるかというと、そう単純な話ではありません。多焦点レンズは、眼の中心に偏りや傾きなく、きれいに収まっていることで、良好な見え方を実現できますが、強膜内固定では、レンズの支えを2点で眼に固定するため、その位置により、中心のズレやレンズの前後方向の傾きがどうしても多少は出てしまいます。単焦点レンズでは、軽度の偏心や傾斜があっても、見え方にそれほど影響しませんが、多焦点レンズでは大きな影響が出てしまう可能性が高くなってしまいます。そのため、強膜内固定で多焦点レンズを入れることは一応は可能ですが、十分な視機能を得られる保証はなく、むしろ見えにくさが出てしまうリスクもあり、できれば単焦点レンズを使った強膜内固定を行うべきです。ただ、そのリスクは承知でダメなら単焦点で強膜内固定をやり直す覚悟があり、どうしても多焦点レンズで強膜内固定を行いたいというなら、一応、理論上はできなくはないので、考えてもよいかもしれません(でも、おすすめはしません、、、)。

今日も手術、お疲れ様でしたm(_ _)m


↑AMO社の3ピース多焦点レンズZMA

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