院長ブログ

後嚢があるか無いかで

今日は午前が外来で午後は手術でした。

手術の申し込みは霰粒腫1人(5歳女の子)でした。

今日の手術は、白内障10件、黄斑上膜の硝子体手術1件、眼内レンズ交換2件、霰粒腫2人(4歳、35歳)でした。

眼内レンズ交換はお一人は多焦点レンズ(Synergy)で見えにくさがあり、アイハンスへ入れ換えました。

もう一人はレンティスコンフォートでやはり見えにくく、同じくアイハンスへ入れ換えました。

Synergyからアイハンスへの方は初回の白内障手術から約10か月経っていることと、既に後発白内障に対しての治療(YAGレーザー後嚢切開)が行われていて、後嚢が大きく切り取られていることがネックでした。この患者さまは約2か月前に右眼を同じようにアイハンスに入れ換え、見え方の感触もよかったので、できれば同じレンズを入れたいと思い、新たに入れるレンズは左眼もアイハンスを第一選択と考えていました。

手術では、まずレンズを水晶体嚢から外し、虹彩の上に挙上させ、半分に切開を入れて取り出しました。しかし、残っている水晶体の後嚢がかなり少なかったので、新たに入れるレンズは、嚢内固定を目指すのか、最初から嚢内固定は諦めて嚢外固定用の3ピースレンズを使うか迷いましたが、予定通り、アイハンスを眼の中に入れました。ただ、残った水晶体の中にレンズを入れても、なかなか安定せず、硝子体も前の方に出てきてしまった(硝子体脱出)ため、嚢内固定ではなく、そのままアイハンスを水晶体嚢の前嚢と虹彩の裏側の間に固定する嚢外固定に変更し、硝子体切除を行い、手術を終了しました。アイハンスは嚢外固定用のレンズではなく、眼圧が上がるリスクもあるのですが、この患者さまは元々、近視が強く、眼の直径も大きく、眼のスペースに余裕があったので、嚢外固定でも十分問題なく使え、3ピースの通常の単焦点レンズを使うより、メリットがあると判断しました。もちろん、術後の安全だけを考えれば、3ピースレンズを使えばよかったのですが、この患者さまにとって一番、よいと思う選択がアイハンスの嚢外固定でした。術中にいくつか選択肢がある時、判断が難しい場合もあり、今回も一瞬悩みましたが、ベストと思える答えはすぐに決めることができました。それは、患者さまの気持ちが十分分かっていたことと、患者さまが信頼してくれていると思えていたからです(勝手に思っていただけかもしれませんが、、、)。よい治療ができたと思っていますが、もし何か問題が起こったとしても、その時は、また必要なすべきと思っています。でも、きっとよい方向に向かってくれると思っています。今回の手術は40分くらいかかる手術になってしまいましたが、患者さまとの信頼関係はとても大切だと改めて感じた手術でした。

ちなみに、その後のレンティスからの入れ換えの方は癒着が少なく、後嚢切開もされていなかったので、非常にスムーズに入れ換えできたので、6分くらいで終わってしまいました。後嚢があるか無いかで眼内レンズの入れ換えの大変さはかなりの差が出てしまいます。白内障の術後の見えにくさで困っている方は、単に後発白内障の問題だけならよいですが、レンズ自体に問題がある可能性がある時は、ぜひ後嚢切開をするかどうかは慎重にお考えください。

今日も手術、お疲れ様でしたm(_ _)m

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