院長ブログ

多焦点で見えにくい

今日は一日外来でした。

手術の申し込みは、白内障5人、霰粒腫1人(21歳女性)でした。

多焦点レンズの白内障手術を受け『見えにくい』という経過の場合、

・視力は出るけれど、見えにくい

・矯正視力もよくない

という2パターンがあると思います。

視力が出ても見えにくい場合、視力の数字としては遠方も近方も1.2であっても、それでも『見えにくい』と感じる方もいらっしゃいます。

多焦点レンズは光がレンズを通過する際に10%程度の光が失われ、更にこの残った光の量を3焦点レンズであれば、遠方・中間・近方の3か所に振り分けますので、1か所あたりの光量は単焦点レンズに比べるとだいぶ少なくなります。また、3か所にできる焦点の像が頭の中にインプットされ、その中で必要な距離の像を認識して見るという複雑な作業も必要になります。

また、レンズの構造上、夜の光が異常に見えるハロー・グレア(異常光視症)も多かれ少なかれ出ますし、人によっては日中の光も異常に感じることもあります。

このような原因の一つまたは複数により、多焦点レンズで見えにくい、不快、辛いと感じてしまうことがあります。多焦点レンズの見え方に脳が順応するには時間を要する場合もあり、時間が経つことで症状が改善することもあります。しかし、時間で改善が全く得られない、もしくは十分に得られない場合、行うとすれば、眼内レンズを単焦点レンズへ入れ換えることが唯一の治療かと僕は思っています。

多焦点レンズを入れて見えにく方にも2パターンあり、このような説明をご理解いただけて、レンズの入れ換えを検討される方(その上で、実際に入れ換えするかどうかは個人個人の判断になります)と、この説明が全く、もしくはあまり伝わらない方もいらっしゃると思っています。そして、多焦点レンズで見えにくさが(副症状)が出る可能性は術前に十分説明をしているのですが、後者の方では、事前にきちんとご理解いただいていないように感じます。確かに多焦点レンズの説明は簡単ではないかもしれませんが、多焦点レンズの見える仕組みも単純ではないので、話しを十分に理解できないようであれば、多焦点レンズの見え方も十分なものが得られない可能性もあるので、術前のレンズの説明があまり分からないと感じるような時は、多焦点レンズは選択しない方がよいかと思います。

多焦点レンズは明らかに使わない方がよい(使えない)眼の人もいますが、合うかどうかは、事前に分からない部分があり、合わなそうな方にはなるべく伝えるようにしていますが、使えませんと断定できない場合もあります。そう伝えられても、どうしても多焦点レンズが希望の場合は、術後にかえって見えにくくなるかもしれないことと、それを改善するのは単焦点レンズへの入れ換えが必要になることはどうかご理解いただいた上で、ご選択いただければと思います。

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