院長ブログ

ホルモン療法と霰粒腫

今日は一日外来で、手術の申し込みは、白内障5人、眼瞼下垂1人、霰粒腫2人(3歳女の子、32歳女性)でした。

今日の外来では、乳がんの治療中の患者さまが見えにくさとまぶたの腫れを主訴に受診されました。抗がん剤の中でも、消化器系の癌治療でよく使われるTS-1は角膜障害や涙道閉塞といった眼への副作用が有名ですが、乳がんに使われる分子標的薬は眼への影響は出にくいとされています。しかし、ホルモン療法で使われるタモキシフェンという薬は、機序ははっきりしないものの、角膜症や網膜症、視神経障害、白内障など眼への副作用が出る可能性が指摘されています。

この患者さまでは、角膜表面のキズはあったものの、網膜や視神経は問題なく、明らかなタモキシフェンの副作用は無いようでした。ただ、まぶたには霰粒腫と思われる腫瘤が右の上下まぶたに23個ずつ、左の上まぶたに56個、下まぶたに1個と多発していました。タモキシフェンはエストロゲンという女性ホルモンを抑える薬ですが、エストロゲンは脂質の代謝に深く関わっています。霰粒腫の病態はまぶたの中で作られた脂がうまく分泌されずに貯留してしまうことが成因で、全くの私見ですが、女性ホルモンの変化が脂の性状に影響し、霰粒腫ができやすくなってしまう可能性もあるのかなと思いました。授乳中の女性でも霰粒腫ができやすいイメージがあり、これも出産後にエストロゲンが減ることと関係があるのかもと思っています。ただ、妊娠中はエストロゲンが増えるのですが、妊娠中の女性も霰粒腫ができることも結構ある気もして、やっぱりただの妄想で、女性ホルモンと霰粒腫には何の関連もないのかもしれません(今日、霰粒腫の切開を予定させていただいた女性も妊娠中でした、、、)。

エストロゲンと霰粒腫の関連は定かではありませんが(というか、関連はないかもしれませんが)、タモキシフェンは眼に副作用が出ることもあり、網膜症などは一度出てしまうと、よくならず視力障害を残してしまうこともありますので、ホルモン療法をされている方は定期的な眼のチェックも必要だと思いますし、見えにくさを感じた時は早めに眼科を受診することが大切だと思います。

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