院長ブログ

高齢者の多焦点手術

今日は午前のみの外来でした。
手術の申し込みは、白内障5人、黄斑上膜の硝子体手術1人、翼状片1人、ICL1人、霰粒腫3人(3歳女の子、4歳男の子、53歳女性)でした。

昨日の白内障手術で最高齢は88歳の女性の方でした。この患者さまは元々、他院で白内障の手術のご予定でしたが、眼内レンズを多焦点でご希望されたところ、“高齢だから多焦点は使えない”と言われてしまし、ご本人もご家族も納得ができずに、当院へいらっしゃいました。確かに高齢の方では、多焦点レンズを選択することは慎重になるべきで、それは、どうしても多焦点レンズは構造が複雑なため、高齢の方ではなかなかうまく使いこなせず、視力が出にくい場合や、多焦点レンズは眼の中心にきれいに入れることが大事なのですが、眼の構造が潜在的に弱っていることもあり、よい位置にレンズが入らない可能性や事前に明らかな病気がみつかっていなくても、網膜や神経の昨日が低下していて、視力が出にくいケースもあります。これらの理由により、高齢者ではシンプルな単焦点レンズの方が、視力がすんなり出てくれたり、眼の機能が弱っていても、多焦点レンズよりは影響を受けないで済んでくれることもあり、単焦点レンズの方が使いやすいということはあります。ただ、必ず単焦点レンズしか使ってはいけない、単焦点レンズしか使えないということでもなく、ご本人さまの多焦点レンズを使いたい希望が強く、明らかに悪い所見がなく、高齢では、視力が出にくい可能性をご承知いただければ、多焦点レンズを使うことは決して悪い選択ではないと思っています。

また、多焦点レンズにもいくつか種類があり、3焦点レンズや5焦点レンズなどの“回折型多焦点レンズ”は焦点がいくつかある中で、必要な距離の像を認識する複雑な見方が必要になり、うまく適応できない人もいますが、最近、発売された“波面制御型” Vivityという多焦点レンズは、比較的単純な構造で、焦点の幅を延ばすような見え方をしてくれるので、高齢者でもそれほど抵抗なく馴染む見え方をしてくれるように感じています。なので、この方もVivityを選択しましたが、術翌日の今日の視力は、遠方0.8 中間0.7 近方0.3で『だいぶ見えるようになった』と言ってくださり、よかったです。高齢者の患者さまがみんながみんな多焦点レンズを使ってよいというものではないと思いますし、確かに単焦点レンズの方が使いやすいということはあると思いますが、逆に、ただ単に年齢だけで多焦点レンズは使えないということもなく、そのリスクやデメリットを十分理解できるような方は、多焦点レンズを使う選択肢は全然あってもよいと思います。

今週も皆さま、お疲れ様でしたm(_ _)m

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