院長ブログ

乱視矯正が必要かどうかは

今日は一日外来でした。手術の申し込みは白内障4人、眼瞼下垂1人、霰粒腫1人(4歳男の子)でした。

白内障手術の患者様から、『乱視があるけど、乱視を治すレンズ(トーリックレンズ)を使ってくれるの?』とか『トーリックレンズを使いますね』と伝えると、『えっ、私、乱視があるんですか?』と聞かれることがあります。

ちょっとややこしい話なのですが、トーリックレンズを使うかどうかは、単にその人の眼に乱視があるかどうかではなく、角膜に乱視があるかどうかで決める必要があります。

乱視は基本的に角膜と水晶体から作られる眼球の歪みです。

角膜だけで乱視が出ている人、角膜は大丈夫だけれど、水晶体から乱視が出ている人、角膜も水晶体も乱視を作っている人もいます。

①角膜は乱視あり 水晶体は乱視なし
②角膜は乱視なし 水晶体は乱視あり
③角膜も水晶体も同じような方向の乱視あり
④角膜も水晶体も乱視ありだけれど、方向が逆向き

白内障の手術では水晶体は取り除いてしまいますので、白内障の手術で問題になるのは『角膜乱視』です。ですので、術前に水晶体の乱視はいくらあっても問題にはならず、角膜乱視があるかどうか(強いかどうか)でトーリックレンズを使うかどうかを決める必要がある訳です。

①③の場合は、ご自分で乱視の自覚があることが多いので、『トーリックを使います』と伝えると、すんなりご理解いただけると思いますが、

②の場合は、ご自分の乱視の自覚はあるのに(水晶体を取ってしまえば、それだけで乱視がなくなってしまい)、トーリックを使う必要がないので、『えっ、トーリックでなくていいんですか!?』となると思いますし、

④の場合は、ご自分では乱視の症状はほとんどないのに(それまで乱視を打ち消しあってくれていた水晶体を取ってしまうと、術後には角膜の乱視だけ残ってしまい)、手術ではトーリックを使う必要があるため、『私、乱視があるんですか?』とびっくりされるのも分からなくはないです。(④の場合は、術後、急に乱視の見えにくさを感じさせてしまうことがあるので特に注意しています)

こう書いてみても、やっぱりややこしいなと思うので、この説明でうまく伝わるかどうかは心配ですが、乱視は角膜の乱視と水晶体の乱視があり、白内障の手術では水晶体は取り除いてしまうので、トーリックレンズを使うかどうかは角膜乱視で決まります。

術前に乱視の自覚があるからトーリック、乱視の自覚がないから、ノントーリック(トーリックでないレンズ)というものではないのです。

白内障の手術を受ける方が、なぜ自分がトーリックレンズなのか、なぜトーリックレンズでなくてよいのかを、少しでもご理解いただけたらうれしいです。

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