院長ブログ

眼で見ることだけが『見る』ではない

今日は午前が外来で午後が手術でした。
手術は白内障が10件に硝子体手術が2件(黄斑上膜と眼内レンズ落下の強膜内固定)でした。

外来では、視神経炎という病気で両眼とも視力が手動弁(手が動くのが分かる程度の視力)の30代前半の男性が再診で「遮光眼鏡を作りたい』といらっしゃいました。残念ながら現代の医学をもってしても視力を改善できない病気もまだまだ存在します。若くして強い視力障害が残ってしまうと、ともすると絶望感に打ちひしがれてしまうかと思いますが、この患者さまはとても前向きに今、残っている視機能を最大限に活かし、スマホや拡大読書器や奥様のサポートを受けながら自宅での生活や職場への復帰を目指していました。もちろん、ここまで来るには、現実を受け止めたり、将来を悲観したり、不安に襲われたり、色んな思いがあったと想像しますが、この前向きな姿勢はとても素晴らしく立派だと僕は思います。なかなかできることではないと思いますが、視力だけで『見る』訳ではなく、耳や手を使って、何か道具や誰かの力を貸してもらい『見る』を補うことができるということを実際に示してくれていると思います。診察の最後に『もしかすると将来、僕の病気を治せる治療がみつかるかもしれませんよね?』と聞かれました。『そうですね、今はよい治療法はなくとも、これからiPS細胞による再生医療や人工網膜のような代替医療で治せる時代が来るかもしれません。だからそれまで頑張って元気に生きることが大切だと思います。』と伝えてこの日の診察を終えました。その患者さまが診察室を出る姿はとても頼もしく見えました。半年前に初めて会った時より視力は下がっているのですが、歩く姿はずっと逞しく力強く感じました。僕も少しでも力になれればと思いますが、この患者さまのような生き方が見えなくて悲観している患者さまに少しでも光になればと思います。

手術は最後の眼内レンズ落下に対する強膜内固定の硝子体手術でレンズを取り出す時に、虹彩という茶目の部分が裂けてしまい、その裂けた虹彩を縫う処置も追加で行なったので、手術時間は2時間を超え患者さまにはとても申し訳ないことをしてしまいました、、、

ただ、途中で断念するのではなく、手術時間は長くなったとしても、必要な処置はきちんとして手術を終えるのが責任と思っています。これも考え方とは思いますが、そういう治療をしていきたいと思います。手術はトラブルを起こさないことが大事ですが、起こってしまった時に焦らず諦めず適切に対処することが同じくらい大切だと思っています。でも、なるべく安全で時間のかからない手術をしたいと思います。

↑レンズの破損があり取り出す際に虹彩が裂けてしまいました、、、

↑虹彩を根本で縫合しここまで修復して手術を終えました。

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